北京地下鉄現有車両紹介
 
北京地下鉄車両基本スペック

 
現有の四路線(1号線・2号線・13号線・八通線)ともに直流750V、第三軌条集電式、軌間1435mmに路線規格は統一されている。車体規格は大まかに分ければDK16形以前の三扉、車体幅2600mm、側板に補強リブ付の車両と、それ以降に登場した四扉、車体幅裾絞り2800mm、補強リブ無しの車両の二種類に大別されるが、各車似たようなスタイルながらも制御方式などによって細かく形式が分かれていて、車両形式は意外に多く、注意深く観察すれば興味は尽きない。今のところ四扉車に統一された13号線と八通線を除いて三扉車と四扉車が混用されている状態だが、将来的には三扉車は淘汰され、四扉車に統一される方向にあるようだ。

 車体規格、制御方式は現状では各車各様だが、車両性能は、最高速度は80km、起動加速度0.9m/s2減速度常用:1.0m/s2 非常:1.2m/s2に揃えられている。

 ラインカラーは1号線と八通線が赤、環状線が青、13号線がオレンジで、車体色は白地の車体に各線のラインカラーをあしらった帯を巻いたツートンカラーとなっている。車庫も各線それぞれ独立しているため、通常は所属路線と違う路線を走ることはない。

 現在の地下鉄車両は大半が1980年代以降に製造された車両で、最も古い車両でも車齢は20年そこそこのはずだが、整備が粗雑なためか、日本の同じ車齢の車両に比べると格段に老朽化しているように感じる。

北京地下鉄の付番法則

T1111番。ゾロ目ナンバーだ!

車体前面の貫通扉には編成NOが記入されている。
 北京地下鉄にも車両番号はあるが、日本のように形式で分かれているわけではなく、車両形式とは別に所属車庫毎にふった整理番号のようなものである。このため転属や車両組み換えの度に頻繁に改番が発生することになるし、若番車のほうが古いかというと、それも全く関係なく、ややこしい。

ここでは二号線のT111編成(DK16形)を例に挙げて解説してみよう。


@最初のアルファベットは所属車庫(車両段)を指す。この場合「T」太平湖車両段所属車。
他に「G」古城車両段(1号線)、「S」四恵車両段(1号線)、「T」太平湖車両段(2号線)、「H」回龍観車両段(13号線)「TQ」土橋車両段(八通線)が存在。

A千位は制御方式を示す。この場合「1」抵抗制御。
他に「2」界磁チョッパ、「3」電機子チョッパ、「4」VVVFインバーターが存在。

B百〜十位は編成番号を示す。この場合11番編成という意味。

C一位は編成中の連結位置を示す。この場合1両目に連結している車両ということ。

つまりT111編成の六両は
T1111-T1112-T1113-T1114-T1115-T1116
このようにナンバリングされている。


各路線の車両

DK1形 北京001〜002 廃車済み


DK1形 北京001号 廃車体 古城車庫


車両解説
  
1967年長春客車廠製。北京地下鉄開業にあたっての試作車両で001・002の2両が製造された。
  四扉クロスシート車体を持つが、製造後に四扉車体の強度不足が発覚したため実際の営業運転には使用されず、また量産車のDK2形は三扉車体にあらためられている。
  すでに廃車されて久しいが車両自体は現在でも古城車庫の最北端の側線に放置されかなり荒廃しているもののその姿を見ることができる。

DK2形 北京201〜北京219 19編成76両 廃車済み


DK2形 北京2042 廃車体 太平湖車庫

DK2形 北京2042 廃車体 太平湖車庫

車両解説
  
1969〜70年長春客車廠製。北京地下鉄開業時に76両が製造された北京地下鉄初の量産型車両。試作車のDK1形が四扉車体だったのに対して三扉車になり、前照灯の位置も変更されたため、DK1形とは全く異なる車両となったが、車内のクロスシートはそのまま存知されている。
  前面のパノラミックウィンドウ・三扉車体・クロスシートという車体の基本形はその後の増備車であるDK3形やピョンヤン向けのDK4形まで引き継がれ、70年代の北京地下鉄京地下鉄スタイルを確立した車両である。
  ただ文革期まっただ中の製造であったためか車両の造りは粗く、開業間もない1969年11月、漏電が原因で死者3名、負傷者200名以上の惨事となった車両火災事故を引き起こし、以後の製造は停止。車両増備は難燃性を強化したDK3形に引き継がれた。
  1978年には制御方式を複巻モーター装備の界磁チョッパ制御に改造されたものの、車体の老朽化が早くに進行したため、1984年〜1986年にかけて車体載せ換え更新を実施、全車DK11形に生まれ変わった。
  なお車体更新時に不要になったDK2形の旧車体のうちいくつかは解体されずに古城車庫や太平湖車庫に放置されている。現在では、ほとんどが荒れるにまかせて朽ち果てている状態だが、太平湖車庫に残されている2042号は教習用に使われていることもあり、保存状態はまあまあで、昔の北京地下鉄の面影を今に伝える貴重な存在と言えるだろう。

DK3形(八通線土橋車庫所属) TQ101〜114 14編成42両(全車運用離脱)


DK3形 TQ106編成

DK3形 車内
 
DK3形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc
TQ101 TQ1011 TQ1012 TQ1013 使用停止
TQ102 TQ1021 TQ1022 TQ1023 使用停止
TQ103 TQ1031 TQ1032 TQ1033 使用停止
TQ104 TQ1041 TQ1042 TQ1043 使用停止
TQ105 TQ1051 TQ1052 TQ1053 使用停止
TQ106 TQ1061 TQ1062 TQ1063 使用停止
TQ107 TQ1071 TQ1072 TQ1073 使用停止
TQ108 TQ1081 TQ1082 TQ1083 使用停止
TQ109 TQ1091 TQ1092 TQ1093 使用停止
TQ110 TQ1101 TQ1102 TQ1103 使用停止
TQ111 TQ1111 TQ1112 TQ1113 使用停止
TQ112 TQ1121 TQ1122 TQ1123 使用停止
TQ113 TQ1131 TQ1132 TQ1133 使用停止
TQ114 TQ1141 TQ1142 TQ1143 使用停止

車両解説
  
北京地下鉄開業時に用意されたDK2形の改良型で1971〜72年に計46両が製造された車両である。登場時は、300番台を付番されたため、3形車と呼ばれたそうだ。
  DK2形(2形車)との外観上の差異は、窓下のウインドシル状の帯板がなくなり、室内に扇風機が装備され、それに伴い屋根の通風器がモニタールーフ状のもの変更となった程度だが、断流器、抵抗器の容量を増加、配線、木部に難燃処理を施すことなと主に安全面を中心に改良が図られた。また運転室面積を増加して、運転台環境の改善も図られている。なお、北京地下鉄では、この形式までクロスシートで登場したが、現在ではロングシート化されている。

  同じスタイルのDK2形がDK11形に更新されたあとも、DK3形は原型のまま残り、パノラミックウインドウのその丸い正面スタイルから北京の鉄ヲタからは「面包」(食パン)の愛称がつけられている。日本で食パンとスタイルいえば、JR103系のような前面切妻の車両を思い浮かべるが、中国では、前面が半流線型の電車の愛称となっているのが、日中の文化の違いを感じさせてくれ、興味深い。

  北京地下鉄オリジナルの姿を残して6両編成7本に組成されて長らく一号線で活躍したが(車番G101〜107、半端の4両はBD1形と組成)、13号線の開通とともにMc-Mc-Mcの三両固定編成14本に組み替えられて転属となり(車番H101〜114)、地下鉄からは姿を消した。13号線に新形車DKZ5形が投入されると、それに追われるように全車八通線に転属(車番TQ101〜114)。しかし、ここも安住の地ではなく、八通線に冷房つきの新型車「紅蛇」SFX01/02形が投入される度に一両、また一両と運用を外れ2005年夏を前に全車運用から離脱してしまった。

 当車は現在一号線の四恵車庫、八通線の土橋車庫内に全車解体されることなく保管されている模様で、今後の動向が注目される。


 なお、形式称号DKとは電動(Diandong)客車(Keche)の略称と思われ、北京地下鉄に限らず、天津地下鉄(DK12)、平壌地下鉄(DK4)、テヘラン地下鉄(DK24)など、長春客車工廠設計の電車に共通してつけられる形式称号である。

DK6形(2号線太平湖車庫所属) T119編成1193・1194 2両

DK6形 T119編成T1193 東直門


DK6形(写真左) T119編成 太平湖車庫

DK6形廃車体 太平湖車庫

DK6形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
T119 T1191 T1192 T1193 T1194 T1195 T1196 太平湖

  DK6形は1979年に4両一編成だけ製造された電機子チョッパ試作車である。登場時の編成は、Mc5011-Mc5012-Mc5013-Mc5014と500番台を付番されたため5形車とも呼ばれている。
  車体はデザインはDK3形までの前面にパノラミックウインドウを使用した半流線型の車体から一変して、角ばった前面が「く」の字に折れ曲がった形状に変更され、これ以後80年代に製造された北京地下鉄車両のスタイルの基礎を築いた車両である。また、この形式より座席形状がロングシートに変更されている。
 大幅に変更が加えられたのは機器関係で、制御器には中国が独自開発した電機子チョッパ制御を採用。また制動装置には回生ブレーキを採用し在来車に比べ、20%の節電効果を上げた。とはいうものの、鳴り物入りで登場した電機子チョッパ制御も、故障が多く思ったほどの成果を上げることができなかったのが実際のところだろう。結局DK6形は試作の4両のみに終わり、増備されることはなく、後に制御装置は後述のDK16形と同じ抵抗制御に交換されてしまっている。

  1995年の2号線6両化時に半端となった5011/5012の2両が編成から外され、現在太平湖車庫で旧塗色のまま荒廃した姿をさらしているものの、残る5013/5014の2両は2号線最古参ながら異端車揃いのT119編成の中間車T1193/T1194として未だ健在である。
  DK16形ともども前面がくの字に折れているのが車体の特徴だが、DK6形が前面ライトの上で折れているのに対して、DK16形など、それ以降の車両はライトの下側で折れており、正面の印象が異なること、また運転台次位の窓が小さく、この部分に座席がないなど他車とは異なる点が多く区別は容易。しかし通常は中間に封じ込められているため、特徴的な正面スタイルをはっきり見ることができないのが残念である。



これがDK6形の正面

こちらが2号線の主力車DK16形の正面。
正面形状の違いがわかりますでしょうか?

DK9形(2号線太平湖車庫所属) T119編成1191・1192・1195・1196 4両


DK9形 T119編成 太平湖車庫

DK9形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
T119 T1191 T1192 T1193 T1194 T1195 T1196 太平湖

車両解説
  1983年製の電機子チョッパ試作車でMc-Mc+Mc-Mcの1編成4両が製造された。同じ電機子チョッパ制御車ということで製造時は前述のDK6形の続番502編成(5021-5022-5023-5024)と付番された。車体形状は前年に製造されたDK8形(後にDK16形に編入)と全く同一の前面がゆるやかにくの字に折れ曲がった、角ばったスタイルである。

  DK6形車の成果を反映して、種々の改良を加えられた電機子チョッパ制御器を搭載したが、結果はやはり芳しくなく、結局北京地下鉄では電機子チョッパ制御の独自開発を諦め、翌年には日本より東急車輛製のM形車、三両一編成を輸入し、その技術を研究することとなった。

  1995年の2号線6両化の際には中間にDK6形2両を挟んでT119編成に再編されるものの、後述のDK16形と同性能の抵抗制御車に改造されたため、現在ではDK16形と車体、性能ともに全く同一となっている。

DK11形(1号線古城車庫所属) G201〜207/209〜213/G2082〜2086 12編成72両+4両


DK11形 G202編成 古城車庫


DK11形 車内

DK11形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
G201 G2011 G2012 G2013 G2014 G2015 G2016 古城
G202 G2021 G2022 G2023 G2024 G2025 G2026 古城
G203 G2031 G2032 G2033 G2034 G2035 G2036 古城
G204 G2041 G2042 G2043 G2044 G2045 G2046 古城
G205 G2051 G2052 G2053 G2054 G2055 G2056 古城
G206 G2061 G2062 G2063 G2064 G2065 G2066 古城
G207 G2071 G2072 G2073 G2074 G2075 G2076 古城
G208 G2081 G2082 G2083 G2084 G2085 G2086 使用停止
G209 G2091 G2092 G2093 G2094 G2095 G2096 古城
G210 G2101 G2102 G2103 G2104 G2105 G2106 古城
G211 G2111 G2112 G2113 G2114 G2115 G2116 古城
G212 G2121 G2122 G2123 G2124 G2125 G2126 古城
G213 G2131 G2132 G2133 G2134 G2135 G2136 古城

車両解説

  
DK11形は1969年〜70年の北京地下鉄開業時に計76両製造されたDK2形を1984〜86年にかけて車体のせかえ更新をして誕生した形式である。更新前のDK2形は、前述のDK3形とほぼ同じ流線型スタイルの前面形状を持っていたが、更新後はDK8形(後のDK16形の一部)と同様の角ばった平凡な車体になってしまった。また車体更新に先立つ1978年にDK2形は複巻モーター装備の界磁チョッパ制御に改造されているため、車体更新とあわせて結果的に車体・機器類のほぼ全てが変わったことになり、更新車とはいうものの結果的にはDK2形とは全く別の車両と考えていい。
  4両固定編成で登場したが(編成番号601〜619/登場時6形車)、現在では乗客数の増加により、6両×13本に組み替えて使用されている(不足の2両はBD3形2両を新製して対応)。
現在編成番号G201〜213(G208を除く)の6連X12編成が古城車庫に所属して1号線での運用についているが、1号線では少数派の三扉車で、登場以後各種の改造を受けているとはいえ、車体更新から20年以上がたち、車体も外板が波打つなど確実に老朽化が進んでいて、少数派の界磁チョッパ車両ということもあり、近いうちに淘汰される可能性が高いと思われる。
  G208編成は、幅広四扉車体を持つBD3形G2081/2086とDK11形G2082〜2085との混結編成だが、現在は休車中。

 
DK16形(2号線太平湖車庫所属) T101〜104・106〜118・120〜122・124〜128・302〜304 28編成168両

DK16形 T109編成 太平湖車庫

DK16形 T121編成 太平湖車庫

DK16形 T112編成 太平湖車庫

DK16形 T112編成 太平湖車庫

DK16形 車内

DK16形改修車 T126編成 太平湖車庫


DK16形改修車 車内

DK16形編成表
編成番号 形態 所属 備考
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
T101 T1011 T1012 T1013 T1014 T1015 T1016 太平湖
T102 T1021 T1022 T1023 T1024 T1025 T1026 太平湖
T103 T1031 T1032 T1033 T1034 T1035 T1036 太平湖 元八通線所属車
T104 T1041 T1042 T1043 T1044 T1045 T1046 太平湖
T106 T1061 T1062 T1063 T1064 T1065 T1066 太平湖 元八通線所属車
T107 T1071 T1072 T1073 T1074 T1075 T1076 太平湖
T108 T1081 T1082 T1083 T1084 T1085 T1086 太平湖
T109 T1091 T1092 T1093 T1094 T1095 T1096 太平湖
T110 T1101 T1102 T1103 T1104 T1105 T1106 太平湖
T111 T1111 T1112 T1113 T1114 T1115 T1116 太平湖
T112 T1121 T1122 T1123 T1124 T1125 T1126 太平湖
T113 T1131 T1132 T1133 T1134 T1135 T1136 太平湖
T114 T1141 T1142 T1143 T1144 T1145 T1146 太平湖 車体改修済
T115 T1151 T1152 T1153 T1154 T1155 T1156 太平湖
T116 T1161 T1162 T1163 T1164 T1165 T1166 太平湖
T117 T1171 T1172 T1173 T1174 T1175 T1176 太平湖
T118 T1181 T1182 T1183 T1184 T1185 T1186 太平湖
T120 T1201 T1202 T1203 T1204 T1205 T1206 太平湖 車体改修済
T121 T1211 T1212 T1213 T1214 T1215 T1216 太平湖
T122 T1221 T1222 T1223 T1224 T1225 T1226 太平湖
T124 T1241 T1242 T1243 T1244 T1245 T1246 太平湖
T125 T1251 T1252 T1253 T1254 T1255 T1256 太平湖
T126 T1261 T1262 T1263 T1264 T1265 T1266 太平湖 車体改修済
T127 T1271 T1272 T1273 T1274 T1275 T1276 太平湖 車体改修済
T128 T1281 T1282 T1283 T1284 T1285 T1286 太平湖 車体改修済
T302 T3021 T3022 T3023 T3024 T3025 T3026 太平湖 GTOチョッパ制御
T303 T3031 T3032 T3033 T3034 T3035 T3036 太平湖 GTOチョッパ制御・車体改修済み
T304 T3041 T3042 T3043 T3044 T3045 T3046 太平湖 GTOチョッパ制御

車両解説

  
DK16形は目下のところ2号線の主力車両である。その出自は大きく分けて二つ。一つは1982年にDK8形として製造された車両、もう一つは1986〜1989年にDK8形を小改良してDK16形として製造された車両である。この2タイプはその後の改造により差異がほとんどなくなったため、現在では旧DK8形52両とDK16形116両をあわせた168両をDK16形と総称している。
 登場時はMc-Mc+Mc-Mcの4両編成42本(編成番号401〜442/4形車)に組成されていたが、1995年に6連化され、編成組み換えが行われた結果、現在では6両編成連28本(編成番号T101〜128、T302〜304、105、123欠)となっている。

  外見はほぼ同時期に登場した一号線のDK11形とほぼ同じ、車体幅2600mmの三扉車体だが、こちらは制御方式に力行20段、電制18段の電動カム軸式抵抗制御を採用している点が異なっている。登場がDK11よりも後にもかかわらず、再びカム軸式の抵抗制御に退化したのは、この車両は二号線用車両として登場しており、当時の二号線太平湖車庫にはチョッパ制御の車両を運用・整備する能力がなかったためと推察される(チョッパ制御の車両を運用するには電力吸収装置だか、何か特殊な設備が必要だったはず)。


 電動機出力76kw×4の全電動車編成で、全部先頭車両で中間電動車は存在しないというのも、共産圏らしい標準化思想の賜物。現在では2両固定編成を3本つないで、実質的には6両固定編成で運用しているため、中間に封じ込められた運転台はほぼ使用しないようだが、運転台機器などはそのまま残っているようで、一部車両が過去13号線八通線に転属し3両化された際に、この中間運転台を活用している。

 車体は普通鋼製。車体に補強用のリブが入った共産圏の客車によく見られる車体構造をそのまま踏襲しており、全体的に実用本位の安っぽい作りなのは否めない。2号線の車両は今のところほとんどがこのタイプで、一部に徹底的な改修を加えられた車両も存在するなど、今しばらくは現役と思われるが、三扉車と四扉車が混在している現在、北京市が強力に進めている整列乗車励行の妨げになることは確実で、近い将来には必ず三扉車を廃車して四扉車に統一しようという動きがでてくると思われる。とはいえ四扉車に統一されたとしても北京人がお行儀よく整列乗車するとはとても思えないのだが。

 
DK16形は製造年が多岐に渡り、また各種改造を受けており同形式ながらバリエーションが豊富で、細かく調べていくと興味は尽きない。以下に異端車を紹介してみよう。

★GTOチョッパ改造車

300番台T302〜304がそれ。制御装置をチョッパ制御に改造した車両である。まず1996年に最初の1編成が登場。その結果が良好だったため、後にT105編成を改造してT303に、T123編成を改造してT304とし、現在、改造チョッパ車は6連3編成となっている(そのため現在T105とT123は欠番)。
 
★T1286


 T128編成のうち、T1286は、アルミ車体を採用している。このため他車と違って側面に補強用のリブのないすっきりした仕上がりとなっている。ちなみにこのT1286、製造時の旧番号は4424。DK16形一族168両のラストナンバーであった。
 
★T103、106編成

このニ編成は、13号線が開通する際に転属、さらに八通線を経て再び二号線に復帰するという複雑な経歴を持つ編成である。転属に際しては6連2本を3連4本に組み替えて使用。全線のほとんどが地上区間の13号線、全てが地上区間の八通線で使用するため、足窓を固定式から、上部が開閉できるように改造された。

★T120、126編成

 このニ編成は、機器関係こそ旧来の抵抗制御のままだが、車体に徹底的な改修を施した編成である。外観こそ塗装の変更と側窓を開閉可能に改造した程度で、大きな変化はないが、車内に関しては徹底的に改修され、冷房以外は、ほぼ先進国の新車並みの水準となった。しかし、前述のとおり、北京地下鉄では近い将来三扉車を淘汰する意向もあるようで、今後この種の延命工事を他編成にも施工するかどうかが注目される。
T114/127/128/303編成が、改修工事終了。現在車体改修車は6編成となっています。

小特集 DK16形、もう一つの車番
 
BD1形(2号線太平湖車庫所属) T129〜132 4編成24両
BD2形(1号線古城車庫所属) G115〜126 11編成66両 
BD3形(1号線四恵車庫放置) G2081/2086 2両 運用離脱


BD1形 T131編成(新塗装) 太平湖車庫


BD1形 T131編成 太平湖車庫

BD1形 車内

BD2形 G119編成 古城車庫

BD3形 G208編成 四恵車庫

G208編成はBD3形とDK11形の混成。異形式併結に萌えます。

BD1形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
T129 T1291 T1292 T1293 T1294 T1295 T1296 太平湖
T130 T1301 T1302 T1303 T1304 T1305 T1306 太平湖
T131 T1311 T1312 T1313 T1314 T1315 T1316 太平湖
T132 T1321 T1322 T1323 T1324 T1325 T1326 太平湖

車両解説
  1号線用として1990〜1992年に20両が北京地鉄車両廠で設計、製造された。
 形式BDとは北京(Beijing)地鉄(Ditie)の略と思われ、その名のとおり、北京地下鉄初の独自開発車両であり、これ以降の北京地鉄車両廠設計の車両は、BD○形と称することとなる。
  それまでの車両とは一線を画したリブ無しの四扉車体を採用。また車体幅をはじめて裾絞りの2800mmに拡幅した車両でもあり、その車体のラインから鼓形車両と呼ばれている(太鼓を横から見たときの形状に似ているため)。このため、従来車の定員180名に対してBD1形では230名と約1.3倍に増加している。この裾絞りの2800mm車体幅がこれ以後の北京地下鉄の標準となった。
 ただ制御方式はそれまでの車両と同じく電動カム軸式抵抗制御、制動装置はHSC-D、主電動機出力も電動機出力在来車と同じ76kw×4の全電動車編成で、性能的には在来車と何ら変わることはなく、新世代車両(四扉車)と旧世代(三扉車)の間に挟まれた過渡期の車両といえる。
  現在は2号線に転属してT129〜132編成の6連4編成24両が活躍中。しかし、BD1形は20両しか製造されなかったため、不足の4両をどこで補ったのかは全くの謎である。あくまで推測だが、1号線在籍時に混結組成していたDK3形4両を、2号線転属時にBD1形同様の車体に乗せ換えたのではないだろうか?

BD2形編成表
編成番号 形態 所属
Mc M M M M Mc
G115 G1151 G1152 G1153 G1154 G1155 G1156 古城
G116 G1161 G1162 G1163 G1164 G1165 G1166 古城
G117 G1171 G1172 G1173 G1174 G1175 G1176 古城
G118 G1181 G1182 G1183 G1184 G1185 G1186 古城
G119 G1191 G1192 G1193 G1194 G1195 G1196 古城
G120 G1201 G1202 G1203 G1204 G1205 G1206 古城
G121 G1211 G1212 G1213 G1214 G1215 G1216 古城
G122 G1221 G1222 G1223 G1224 G1225 G1226 古城
G123 G1231 G1232 G1233 G1234 G1235 G1236 古城
G124 G1241 G1242 G1243 G1244 G1245 G1246 古城
G125 G1251 G1252 G1253 G1254 G1255 G1256 古城
G126 G1261 G1262 G1263 G1264 G1265 G1266 古城

車両解説
  1号線用に1994年に6両固定編成11本、計66両が製造された。BD1形を基本に各種改良を加えた車両で、目に付く変更点としては、北京地下鉄としては始めて運転台無しの中間電動車を組み込み収容力を測ったことがあげられる。また、北京地下鉄として始めて電気指令式ブレーキを採用した車両でもある。
  現在全車、一号線の古城車庫に所属。編成番号はG115〜126を付与されている。

BD3形編成表
編成番号 形態 所属
Mc Mc Mc Mc Mc Mc
G208 G2081 G2082 G2083 G2084 G2085 G2086 使用停止

車両解説
  1号線用のDK11形車76両を6連13本に組成変更する際に不足する2両分を補うために1995年に製造された車両で、車体はBD1形を基本としつつも、制御装置をDK11形にあわせて界磁チョッパ制御とした車両である。
  G2081/2086と附番され、G208編成の両端の先頭車に使用された。四扉幅広車体と三扉幅狭車体の異形式混結は、見た目はユーモラスだが、運用上問題が多かったのか、現在では運用を外れ、四恵車庫の一番外側の側線に留置されている。
  運用を外れたあとも、八通線開業前に限界測定試験車として走った実績はあるが、車内の座席の背刷りが全て取り払われている現状では、営業用車としての復帰は望み薄だろう。
DK20形(1号線古城車庫所属) G108〜114 7編成42両


DK20形 G114編成 古城車庫


G1135の旧番プレート 北京4485
DK20形は現在の附番基準になる以前の旧車番を持つ最後の車両である。

DK20形編成表
編成番号 形態 所属 備考
Mc M M M M Mc
G108 G1081 G1082 G1083 G1084 G1085 G1086 古城 車体改修済
G109 G1091 G1092 G1093 G1094 G1095 G1096 古城
G110 G1101 G1102 G1103 G1104 G1105 G1106 古城 車体改修済
G111 G1111 G1112 G1113 G1114 G1115 G1116 古城
G112 G1121 G1122 G1123 G1124 G1125 G1126 古城
G113 G1131 G1132 G1133 G1134 G1135 G1136 古城
G114 G1141 G1142 G1143 G1144 G1145 G1146 古城

車両解説

  BD2形の改良形で1994年に6両固定編成7本、計42両が製造された。
車体はBD2形を踏襲した裾絞りのいわゆる「鼓形車体」だが、初めてアルミ車体を採用した。登場時はアルミ車体の地肌を生かして、帯以外は無塗装だったが、現在は塗装されているので外観上はBD2形と似ているが、車体の塗りわけが異なることや、車体断面形状がBD1〜3形までが直線で構成されているのに対して、DK20形はなだらかな曲線を描くように改良され、ぐっとスマートになった。
  制御方式は在来車と同様、力行20段、制動18段の電動カム軸式抵抗制御であるが、主電動機出力は86kw×4とそれまでの車両に比べてパワーアップされている。

  全車古城車両段に所属。BD2形と同じG108〜114番を付番されている。現在、2号線のDK16形と同様の車体改修工事がが進行中で、現在までにG108/110の二編成が竣工済み。

  なお、この車両、登場時はDK16形の続番、編成番号443〜449として竣工しており、現在の附番に改番される前の旧番号プレートが車内の連結部分に残されている。
 
DKZ4形(1号線西恵車庫所属) S401〜431 31編成186両


S431編成 四恵東


DKZ4形運転席


DKZ4形室内

DKZ4形編成表
編成番号 形態 所属
Mc T M T T Mc
S401 S4011 S4012 S4013 S4014 S4015 S4016 四恵
S431 S4311 S4312 S4313 S4314 S4315 S4316 四恵

車両解説

 
1999年の1号線西単〜四恵東間12kmの開業時に174両が一挙に登場。車体はいわゆる「鼓形車体」の流れをくむが、前面に貫通路がなくなり、前面窓が大きな一枚窓になったことが従来からの車両と異なる点であろう。このためかぶりつきに最も適している車両といえる(笑)。ただ、前面に貫通扉がなくなったぶん、フロントマスクにしまりがなくなって、なんとなく間の抜けた顔になったように感じるのは私だけだろうか?前面非貫通の地下鉄車両など、日本の安全基準では考えられない存在だが、中国ではどうやら問題ないようだ。
 車体はごく一般的な普通鋼製に戻ったものの、客室の内装に木製品の使用をやめ(ってことは今までの車両には使っていたということですね・・・)防火性能を高めている。
 編成は6両固定で3M3Tと、制御方式にVVVF制御(東洋電機製)を北京地下鉄としては初採用した結果、MT比率1対1を実現した。VVVF制御の導入にあたっては、電機子チョッパ制御で失敗を繰り返したことの反省から、安易に完成品だけ輸入することはせず、営団地下鉄(当時)に、研修生を派遣して、技術を学ばせたそうである。
 台車にはボルスタレス台車を採用。マスコンはワンハンドルマスコン、制動装置は電気指令式のHRDAで、隣接するM-T車2両で一組となり、ブレーキ使用時にはM車の回生ブレーキ(再生制動)を優先使用し、その不足分をT車の空気ブレーキが補う形になっていて、回生ブレーキの性能を最大限に発揮し、かつ車輪及びブレーキシューの磨耗を防ぐよう工夫されているそうだ。
 前述のようにVVVF制御を採用した結果、従来の直流モーター使用の車両と比べると比べ、粘着率の向上、M車率の減少、主回路の無接点可などを実現し、保守作業の省力化にも貢献している。
 ちなみにこの車両は乗務員室にクーラー(客室ではなく、まず乗務員室からクーラーがつくというところが、お国柄を表しているような気がする)が初めて採用された車両でもある。

 全車四恵車両段に所属。編成番号はS400番台を付与されている

 なお、形式称号DKZとは電動(Diandong)客車(Keche)組(Zu)の略称と思われ、この車以前に登場した試作電機子チョッパ車DKZ1形や、13号線用のDKZ5/6形など、長春客車工廠製で、ユニット方式固定編成を採用した車両に共通して用いられている。
 
BD11形(2号線太平湖車庫所属) T305・306 2編成12両 運用離脱


BD11形 T306編成 太平湖車庫


BD11形 T306編成 太平湖車庫

BD11形編成表
編成番号 形態 所属
Mc M M M M Mc
T305 T3051 T3052 T3053 T3054 T3055 T3056 使用停止
T306 T3061 T3062 T3063 T3064 T3065 T3066 使用停止

車両解説

 
 2000年北京地鉄車両廠製。GTOチョッパ制御車で、2号線用に6連2編成が登場した。車体はDKZ4形とほぼ同一だが、こちらはチョッパ制御を採用(DKZ4形はVVVFインバーター)し、全M編成なのが異なる。機器的にはDK16形のGTOチョッパ制御車改造車とほぼ同じため、その続番が振られている(編成番号T305、306)。北京の地下鉄マニアからは「GTO」という愛称をもらっているが、登場時から、制御器の不調に悩まされ、稼働率は異常に低く、地下鉄マニアの間では遭遇しただけでも大事件になるような存在であった。それでもラッシュ時に僅かに運行されてはいたようだが、T103、106編成が八通線から再び2号線に戻ると、ほとんど動かなくなってしまった。当然のことながら、私も動いている姿は見た事がない。車庫の奥で眠っている姿ををようやく捕らえた程度である。
 6両固定の四扉車で、本来は中間に封じ込められた運転台などのデットスペースが多い在来車と比べ、抜群の収容力を持つはずなのに、勿体無い話である。

  このBD11形の三両固定編成バージョンとしてBD8形という車両も存在する。このBD8形は、もともと天津地下鉄用に製造された車両であるが、13号線の部分開業時に北京地下鉄に転籍してきたものである。13号線では編成番号H303を名乗っていたが、現在では13号線車両が新型車に統一されたため、回龍観車庫で休車中。おそらく二度と走ることはないと思われる。

DKZ5/DKZ6形(13号線回龍観車庫所属) H401〜456 56編成220両


DKZ5形 H403編成 北苑

DKZ5形 H447編成 芍薬居

DKZ6形 H402編成 西直門

DKZ5/6形編成表
編成番号 形態 所属
Mc T T Mc
S401 H4011 H4012 H4013 H4014 回龍観
S456 H4561 H4562 H4563 H4564 回龍観

車両解説
  
13号線用のVVVFインバーター制御車にして、北京地下鉄で最初の冷房付き車両。2002〜2004年までに、長春客車工廠と北京地鉄車両廠にてH401〜456の4両固定編成があわせて56編成計220両製造され、13号線開業時に他線より転属させて使用していた旧型車両を一挙に置き換えた。
  電気品関係は、1号線用のDKZ4形とほぼ同一で、目新しい技術は採用されていないが、車体全体が丸みを帯びたスマートな形状になっている。

 大半がアルミ車体製(DKZ5形)であるが、一編成のみステンレス車体(DKZ6形)が存在する。H402編成がそれで、この車のみ車体塗装も他車と異なっていて、画一化された13号線車両の中で異彩を放っている。両者の間に性能面での差異はない。

 その前面形状から「猫」のニックネームを頂戴している。

SFX01/SFX02形(八通線土橋車庫所属)


TQ407編成 土橋

SFX01/02形編成表
編成番号 形態 所属
Mc T T Mc
TQ401 TQ4011 TQ4012 TQ4013 TQ4014 土橋
TQ424 TQ4241 TQ4242 TQ4243 TQ4244 土橋

車両解説

 八通線用車両として、2003年〜2005年にかけてTQ401〜424の24編成96両が製造された。車体製作は四方客車工廠と北京地鉄車両廠が請け負ったが、電気品関係はDKZ4形で実績のある日本の東洋電機製。また冷房装置は中国製のものを使用している。

 車体はDKZ5/6形同様、アルミ車体とステンレス車体の二種類が存在。アルミ車体の車両がSFX01形(TQ401〜408、414〜424)、ステンレス車体がSFX02形(TQ409〜413)である。

ニックネームは「紅蛇」

 形式称号SFXのSFは、車両の設計を担当した四方客車工廠の四方(SiFang)から採ったものと思われるが、Xにいてはちょっと分かりません。
 

DKZ10形(13号線回龍観車庫所属) H457 1編成4両


H457編成 望京西

SFX01/02形編成表
編成番号 形態 所属
Tc M M Tc
H457 H4571 H4572 H4573 H4574 回龍観

車両解説

 2005年に長春客車工廠製で1編成のみ登場。13号線の大多数を占めるDKZ5/6形とは全く異なるスタイル・機器を備えた異端車。機器配列もDKZ5/6形がMc-T-T-Mcと先頭車両に電動車を配置しているのに対して、この車両はTc-M-M-Tcと中間に電動車が配置されているなど、全く異なっている。
 すでにDKZ5/6形で統一されていた13号線になぜ1編成だけこのような車両を入れたのか、その事情は謎に包まれている。一説によれば、この車両が天津地下鉄や2007年開業予定の北京地下鉄5号線車両の試作車なのだとか。
 試作車両にしては珍しく現在も13号線で営業運転についていますが午前中に数往復するだけの運用についているため、なかなかお目にかかることができない車両である。