妄想コラム2 妄想市電の輸送力と運転系統に関する一考察(市電南北線編)…その1

朝ラッシュ 2003.5.23 さっぽろ

 これは自慢ですが、私の通勤時間はドアtoドアで15分です。羨ましいでしょう?こんな札幌にもラッシュはあるのです。一応ね。東京や大阪に較べたら屁みたいなものだとは思いますが・・・・。
 さて、ここからが本題。今現在私が激しく妄想中の札幌市電2003、もしも札幌市電が今でも市内の基幹交通の座にあったらというIFをあれこれ検討するのがテーマなのですが、その中で一番問題になるのが市電の輸送力。果たして小さな市電車輛で、「今」の現実世界の地下鉄が運んでいる乗客を運びきれるものなのでしょうか?
 いや、正確に言うと現実世界の「今」ではありません。札幌市交通局2003上の世界では定山渓鉄道が存続していたり、石狩市までの路線が開通していたりと、現実世界とは異なる点が多く、市電南北線について言えば現実世界を上回る混雑が予想されます。
 こうした、現実世界とは異なる諸条件が市電南北線に与える影響を加味しつつ、市電南北線が取りうるべき最適な運転間隔や運転系統を考えるというのが、当コラムの趣旨であります(なんと空虚な・・・)
 ではこのコラムを読むにあたっての参考ページ、前提条件を下に列挙しますから、まずはこちら↓に目を通して下さい。
前提条件
のコラムの前提となる各種設定です。

(史実)地下鉄南北線

 世界でも珍しいゴムタイヤ式地下鉄。ゴムタイヤ地下鉄は低騒音、低振動、鉄車輪より粘着力に優れているため加速性能がよく急勾配にも強いという利点があるがその反面、その特殊な駆動方式のため、在来鉄道への乗り入れは不可能。軌道はゴムタイヤ式案内軌道電圧はDC750Vで第三軌条式を採用。運転区間は真駒内〜麻生。ほとんどが地下区間だが定山渓鉄道の廃線跡を利用した南平岸〜真駒内間のみ地上の高架区間となっている。


(架空)市電南北線

 市電を段階を追って地下化したいわゆるLRT路線で、歴史的な経緯で「南平岸〜中島公園」間の平岸線、「中島公園〜北24条」間の南北線、「北24条〜新琴似」間の鉄北線の三路線に分かれているが、実質的には「南平岸〜新琴似」間の一本線で三線まとめて南北線と呼ばれることが多い。
規格は市電と同規格の架空線式DC600V、軌間1067mmで南平岸〜北24条までが地下区間、残りの北24条〜新琴似間は札幌新道との交差部をアンダーパス化している他は地上併用軌道。南平岸・新琴似でそれぞれ定山渓鉄道・石狩開発鉄道と接続し、それぞれと相互乗り入れしている。他に中島公園付近に在来市電との連絡線があり出入庫やラッシュ時に使われている。もともと市電規格のため、車体幅は2400mmと狭く、在来市電への乗り入れ運用もあるので使用車両は在来市電と共通の三車体連接車となっている。
 史実では地下鉄建設と平行して市電が廃止されたが、この世界では鉄北線の一部(札幌駅前〜北24条)が廃線(地下化)となった以外は健在。「中島公園〜さっぽろ」間の西四丁目通は地上を市電、地下を南北線が走っていることになる。


定山渓鉄道

 史実では昭和45年(1969年)に廃線となった定山渓鉄道だが、この世界では南平岸〜定山渓間で存続しているという設定。軌間は1067mm。南平岸で市電南北線と接続、相互乗り入れを行っている。この関係で昭和47年の市電との相互乗り入れ開始時に電圧はDC1500から市電と同じ600に降圧.。日中は札幌発定山渓行きの急行電車も走らせている。


石狩開発鉄道

 国鉄札沼線を引き継いだという設定の第三セクター線で札幌駅前から大学前までを結ぶ学園都市線と新琴似から花畔までを結ぶ石狩線の二線で構成されている。主な出資社は札幌市・石狩市・JR北海道・中央バスといったところ。函館本線の桑園高架完成時にJRから運営を切り離され第三セクター化された。
 第三セクター化と同時に路線を電化、路面電車タイプの電車が頻繁に走る札幌近郊のLRT線に変貌を遂げた。学園都市線、石狩線ともども新琴似から南北線に乗り入れ「すすきの」まで相互直通運転を行っている。
 なお大学前以遠は第三セクター化と同時に廃線となった。

 実はこの問題、結論は既に自分の中では出ているのですね。輸送力の面から考えればおそらく地下鉄三線(南北線・東西線・東豊線)のうち南北線だけは大形の本格的な地下鉄(但しゴムタイヤではなく鉄車輪式)にするのが、運用の面からも効率の面からも最も効率がいいはず。何も無理矢理理屈をふりかざして、市電を地下にもぐらせなくてもいいわけです。しかし、これには一番の問題が・・・・。その設定では、この世界の創造主である私自身が萌えない・・・。やっぱり、路面電車ヲタとしては、市電をそのまま地下にひっぱって来たいわけです。そんなわけで、市電規格の車輛をそのまま地下を走らせた場合、いったいどのくらいの運転間隔で、どのくらいの連結両数で、どのような運転系統で、走らせれば今の地下鉄で運んでいる乗客を運びきれるのか?という事を妄想してみたいと思います。

 まずはこの表をご覧下さい。↓
地下鉄と市電の輸送力比較
運用車輛の
車体幅×車体長m×連結両数=車輛総面積
1時間あたり本数(運転間隔) 1時間あたり列車床面積(u)
(車輛総面積×1時間あたり本数)
@南北線(現実世界) 車体幅3m×車体長18m×連結両数6両=324u 約17本(3分30秒ヘッド) 5508u(基準値固定)
A市電車輛
三車体連接車×1両で運行した場合
車体幅2.4m×車体長30m×連結両数1両=72u 約76.5本(47秒ヘッド) 5508u(基準値固定)
B市電車輛
三車体連接車×2両で運行した場合
車体幅2.4m×車体長30m×連結両数2両=144u 約38.3本(1分34秒ヘッド) 5508u(基準値固定)
C市電車輛
三車体連接車×3両で運行した場合
車体幅2.4m×車体長30m×連結両数3両=216u 約25.5本(2分21秒ヘッド) 5508u(基準値固定)
 この表は、2003年春現在の地下鉄の運行本数に基づいて、一時間あたりの輸送力を一時間あたりの床面総面積(他にもいろいろものさしはありそうだが、これが一番出しやすかった)におきかえて、市電車輛で、地下鉄と同等の床下総面積をたたき出すには一体どのくらいの連結両数で、どのくらいの運転間隔にすればいいかをはじき出したものです。

 市電、終わってます・・・・。架空世界における札幌の市電車輛は全長30mと現行の軌道法の限界ぎりぎりいっぱいの大きさの三車体連接車、さらには市電の車輛限界を現実の2240mmから2400mmと京都地下鉄東西線や名古屋地下鉄東山線レベルまで拡幅されたと仮定したのです。それでいてこの結果・・・・。まあ予想はついていましたけどね。

 もし、三車体連接車を単車で投入した場合、ラッシュ時の運転本数は
1時間に76.5本、47秒ヘッドというものすごい数字になりました。言っておきますが、これは今でも札幌を走っている小さなチンチン電車を使った場合の数字じゃないですよ。路面電車としては最大級の車輛を投入したと仮定した場合の数字です。それでいてこの結果。一時間に76本の電車を走らせなければ現在の地下鉄と同等の輸送能力をもちえないわけです。現実問題として47秒間隔で地下鉄を走らせるのは安全面から考えても無理でしょうね。

 ということで残る手段は車輛増結しかなくなりましたが、これまた苦しい結果が。もし三車体連接車を2本つなげた場合でもラッシュ時運転間隔は1分34秒。三車体連接車を3本つなげてようやく2分21秒間隔という現実的な数字になります。それではラッシュ時には三車体連接車の三両連結で運転間隔は約2分30秒と設定すれば問題ないかというと、話はそう単純ではありません。これはあくまでもおおまかな参考値。と、いうのも現実世界の地下鉄南北線と架空世界のLRT南北線では、路線自体はほとんど同じですが、周囲を取り巻く環境が異なるのです。環境が異なれば、当然その影響を受けて南北線自体の輸送人員も変わってくるはずです。次はそのあたりを考えてみたいと思います。
現実世界と架空世界の南北線の相違点  では、ここで一つ現実世界と架空世界の南北線の相違点についておさらいしてみましょう。分かり易くするため、比較地図を作ってみましたので、まずはこれをご覧下さい。
 
現実では廃線となった定山渓鉄道や市電の西4丁目線が存続。もともと「すすきの」までだった市電西4丁目線は中島公園入口まで延伸されています。このあたりのいきさつについては妄想コラム1に詳述しています。また札沼線は石狩開発鉄道という第三セクター鉄道になりLRT化されています。この石狩開発鉄道は石狩市「花畔」までの新規路線も開業しているという設定です。

 南北線自体の現実世界のとの最も大きな相違点は車輪にゴムタイヤではなく鉄車輪を採用していることでしょう。これによって、他路線との相互直通運転が可能となっています。具体的には「南平岸」から定山渓鉄道に乗り入れ、「下藤野」まで、また「新琴似」から石狩開発鉄道に乗り入れ「大学前」「花畔」までの相互乗り入れが行われているという設定です。

 以下ではこれらの現実とは異なる南北線周辺の各路線が南北線に与える影響も考えつつ、さらに詳しく運転系統・運転間隔などを煮詰めていきたいと思います。
現実世界
架空世界
現実との相違点が南北線に与える影響
●2−1…石狩方面への延伸


 石狩市の平成15年現在の人口は5万5千。近年宅地化が進み、平成8年に市制を施行している札幌の一大ベッドタウンですが鉄道は存在しません。朝のラッシュ時の麻生バスターミナルには石狩市方面からバスがひっきりなしにやってきて、地下鉄への乗り換え客で大混雑します。そんな地域ですから、鉄道延伸の要望は強く、麻生や栄町からLRTやモノレールを走らせることも検討されていますが、財政難の昨今、その実現は望み薄かもしれません。
 架空世界においては石狩開発鉄道(以下石狩開発)が南北線麻生から、石狩市の人口の5分の4が集中する花川南・北地区を貫通して「花畔」に至る路面電車線(石狩線)を開通させていることとしています。開通のタイミングとしては石狩市が市制を施行した平成8年が適当でしょうか?以下ではこのLRT石狩線の開通が南北線に与える影響を考えてみたいと思います。 


中央バス 南北線麻生行きバス本数
停留所名 中央バス自動車学校前(札幌市新琴似) 花川南5条3丁目(石狩市花川南) 花畔団地(石狩市花川北)
朝ラッシュ時1時間あたり便数 30 17 16
日中1時間あたり便数 13
 
上の表は、石狩市で路線バスを運行している中央バスの花川地区方面→麻生駅行きのバスの本数を3つの停留所をピックアップして比較してみたものです。花畔団地→花川南5条3丁目→中央バス自動車学校前の順に麻生に近づいていきます。多くの系統が重複する中央バス自動車学校前→麻生間はラッシュ時に30本。平均2分に1本の割合でバスが走っていることが分かります。
 路面電車を石狩市→麻生間の基幹交通として整備するとするとその運転本数はこのバスの本数が参考になります。石狩市から札幌に向かうバス路線としては麻生行きの他に栄町行き、手稲行きがありますが、それぞれ1時間に1〜2本と運転間隔が粗いので、これらの路線は参考外としてよいでしょう。
 バスに代わる輸送機関となる路面電車は一両(おそらく2〜3車体連接車)でバスの2〜3倍の輸送力があると仮定、総輸送人員が等しいとすれば、運転本数はバスの2分の1ないし3分の1となるでしょう。間を取って2.5分の1とすると中央バス自動車学校前→麻生間でラッシュ時1時間12本(5分ヘッド)日中5本(12分ヘッド)、花畔→中央バス自動車学校前でラッシュ時1時間7本(約9分ヘッド)日中3本(20分ヘッド)という運行本数が浮かびあがってきます。
 ただ、これはあくまでも乗客数が、バス利用時と同じだったらの話。現実世界ではバス路線利用者のほとんどが、麻生で地下鉄南北線に乗り換えて札幌中心部に向かっていますので、石狩開発では乗客の動きに沿って、LRT南北線に乗り入れ乗り換えなしで「すすきの」あたりまで出れるようにすると利便性が向上し、新たな需要を喚起できるかと思います。
(表1)買物の目的地別比率  さて、それでは具体的に新琴似、石狩地区に鉄道ができたことにより、どのような新規の需要を生むのかについて考察したいと思います。このことについては運輸施設整備事業団のホームページ内の調査研究「都市鉄道の効果・第四章」に詳細な研究報告があるので、そのデータ・表をもとに話を進めてみたいと思います。

 この調査報告では、地下鉄の開通による都心などへのアクセス利便性の改善の結果、住民の買い物への出かけ先に変化があったことを述べています(表1)。
 同じ買い物に出かけるのでも地下鉄沿線にある南郷13丁目や福住の住人のほうが、地下鉄非沿線の伏古、新琴似地区より都心に出向くことが多いというのです。とすれば、現実世界では鉄道非沿線の新琴似地区でも石狩開発のような鉄軌道系の交通機関が開通すれば、若干の買い物需要が期待できるのではないでしょうか?

 また、車利用の高齢者・障害者が、鉄道が開通することで、鉄道に乗り変わるのも見逃せない新規需要でしょう。調査報告によれば「地下鉄等都市鉄道を含む公共交通機関は、マイカー利用に制約のある人にとっては特に生活の足として大きな期待が寄せられている。実際、地下鉄沿線の高齢者は、沿道地域高齢者に比べ鉄道利用率が高い。なお、施設、車両のバリアフリー化やユニバーサルデザインの採用等により高齢者・障害者等移動制約者の負担も軽減される方向にある」ということだそうです。
 (表2)は地下鉄沿線三地区(白石・南郷13丁目・福住)と非沿線二地区(新琴似・伏古)の地区別交通機関分担率を示したものですが、やはり地下鉄沿線のほうが非沿線よりも自動車利用率が低くなっていることが分かります。このことから、もしも石狩開発石狩線が開通した場合も若干の高齢者、障害者の自動車からの乗り替わり需要があると考えていいのではないでしょうか?

 また、一般の車利用者から鉄道への乗り替わり需要は、どれほどあるかも併せて調べてみましょう。
 (表3)は地下鉄沿線・沿道地域の都心からの距離別自動車分担率のうち、東豊線の栄町、福住の地下鉄開業前(1983年)と開業後(1994年)のデータを抜粋したものです。このうち、新琴似・石狩地区と比較すべきなのは、都心からの距離から見て福住のほうかと思いますが、「福住」では残念ながら乗用車の分担率は開業前と較べて開業後にもほとんど下がっていません。今の時代マイカー使用世代の新たな需要を喚起するのは困難なのかもしれません。
 特筆すべきは「福住」「栄町」ともにバスが地下鉄開通によって壊滅的な打撃を受けている点です。現実世界では石狩、新琴似から札幌中心へのバスが1時間に3本ほど運行されていますが、これは石狩開発石狩線がもし開通したとすれば系統廃止になると思われます。
 
(表2)札幌市鉄道沿線、道路沿道地区別交通機関分担率
(私事目的65歳以上)
(表3)地下鉄沿線・沿道地域の都心からの距離帯別自動車分担率(通勤目的)(一部抜粋)

 さて、これらのデータを基に、先ほどバスの運行本数をもとに算出した石狩開発鉄道の運転間隔を修正してみましょう。通勤客の新規需要はあまり期待できないことが分かったので、ラッシュ時は中央バス自動車学校前→麻生間1時間12本(5分ヘッド)、花畔→中央バス自動車学校前1時間7本(約9分ヘッド)と先ほどのままとします。日中は高齢者需要・障害者需要が若干見込めるため、本数を若干増やして(毎時1本程度)中央バス自動車学校前→麻生間1時間6本(10分ヘッド)、花畔→中央バス自動車学校前1時間4本(15分ヘッド)となりましょうか。乗客の流れから見て南北線に乗り入れて「すすきの」あたりまで直通運転するのが適当かと思います。

 ラッシュ時の南北線に与える影響は前述のように車利用客の転移が見込めないため現状と余りなさそうです。ただ、石狩方面→札幌中心部に向かうバス(毎時3本)の利用者は南北線に転移すると思われますので純増はこの分となりましょうか。
よって南北線朝ラッシュ時に石狩開発鉄道が存在することによる純増分はバスで毎時3本分、つまり三車体連接車とすると約1両分(車輛総面積72u)ということになります。


●2−2…新琴似での結節強化

 現実世界でのJR札沼線(学園都市線)はラッシュ時には5〜6両のディーゼルカーが10分間隔で走る札幌の都市近郊鉄道。しかし、この架空世界では石狩開発鉄道学園都市線(以下学都線)という第三セクターのLRT路線となっていて、市電南北線同様に路面電車タイプの三車体連接車が走っているという設定です。この路面電車タイプの車輛が走る学都線のラッシュ時の運転間隔は、現実世界上も架空世界上も輸送量が同等と仮定すると、一列車あたりの輸送力は現実世界のJR(車体幅2.9m×車体長20m×6両=一列車あたり面積346u)の車輛は、架空世界の市電車輛(車体幅2.4×車体長30m×2両=一列車あたり面積144u)の二倍以上ありますので、架空世界の学都線のラッシュ時運転間隔は現実の二分の一の5分間隔程度で運行されていると推測します。

この学都線、路線は現実世界の札沼線の路線を概ね踏襲していますが、一つだけ大きく異なるところがあります。新琴似が南北線との乗り換え駅となり、また新琴似を挟んで南北線と相互直通運転を行っているのです。
 確かに現実世界でも南北線の麻生駅がJR札沼線新琴似駅との乗り換え駅となっていますが、麻生と新琴似は400m以上離れていて、実際にこの間の乗り換え需要は余りなく、ほとんどの乗客は地下鉄の乗り換えずにそのまま札幌まで直通乗車しています。
 しかし、架空世界においては、この札沼線は市電と同規格のLRT路線、学都線になっているという設定です。また市電南北線は学都線の新琴似まで延びており同一ホーム上での乗り換えが可能となっています。このため、学都線を利用する通勤客の大半はここで札幌、大通方面へ向かうのに便利な南北線に乗り換えることになると思われます。学都線と南北線が相互直通運転するとなれば、ここからの南北線への流入はさらに顕著になるでしょう。

 市電南北線の輸送能力を算出した時と同じ計算式でラッシュ時1時間あたりの現実世界の札沼線の輸送能力を床面積換算すると車体幅2.9m×車体長20m×連結両数6両×1時間あたり運転本数6本=2088uとなります。ただ、石狩当別〜新琴似間は6両編成の列車が満席になるわけではないので、計算式には割引が必要でしょう。おそらくこの区間の正味の必要連結両数は4両程度ではないでしょうか
(但し、データがないので確証はありません。求むデータ)。そのうち南北線への乗り換え需要はおそらく3両分程度。つまり運結両数を6両、毎時6本運転の場合の必要床下総面積2088uの半数、1044u程度が新規に必要な朝ラッシュ時の南北線床下総面積と思われます。


●2−3…併用軌道区間の存在


鉄北線改良工事(昭和51年)  市電南北線は市電西4丁目線・鉄北線を段階的に地下化したという設定のため、北24条〜新琴似間には、その名残のように併用軌道区間が残っています。現実世界の南北線は当初「真駒内〜北24条」間が先行開業し、末端区間の「北24条〜新琴似駅前」間は市電が離れ小島のように残されていたわけですが、もしも市電を地下に潜らせたとしたら、この北24条以北の離れ小島にあたる部分も当然地下区間と線路がつながり、離れ小島ではなく直通運転が可能な構造としただろうと考えます。そして比較的郊外にあたる北24条以北は建設費用の削減のため、地下線を建設することなく従来の路面併用軌道を改良のうえ活用したのではないでしょうか。
 具体的には
@道路の拡幅とそれに伴う軌道の準専用軌道(センターリザベーション)化。
A従来国鉄駅とは200mほど離れていた「新琴似駅前」から路線を延伸して国鉄新琴似駅前と同一ホーム上で乗り換えができるよう改良。
B札幌新道開通時には交通渋滞を引き起こさないよう新道部分をアンダーパスに改良。
C電車優先信号の設置。
D電停を地下区間に合わせての高床化。
E停留所の統廃合。
 などの工事が必要でしょう。鉄北線当時の写真を見ると、鉄北線の走っていた北大通りの両脇には建物が少なく、北24条までの地下線開通(現実世界では昭和46年、架空世界では昭和51年)当時、北大通りの拡幅は容易に行うことができたのではないかと思います。


 これらの工事により、鉄北線北部区間は併用軌道としてはかなりの高速走行が可能となります。しかも地下鉄を新規で作るよりはるかに安上がりです。
 しかし、この併用軌道区間。昭和50年代頃まではこれで充分間に合うでしょうが、札幌北部郊外の人口が増えてくるとすぐに輸送力不足を露呈するはずです。一番はじめに述べましたが、地下鉄(6両編成)と市電車輛(市電最大級の三車体連接車)では一列車あたりの輸送力に4〜5倍の開きがあるからです。ならば、市電を増結して2両、3両で運行すればいいかというと話はそう単純ではありません。なぜなら軌道法という法律で、併用軌道を走る路面電車の全長は編成長30mと決められているからです。
 なら、京阪京津線はどうなんだ、というつっこみが聞こえてきそうです。確かに京阪京津線は車体長16mの車輛が4両連結(つまり編成長64m)で大津市内の併用軌道を走っています。軌道法には抜け道があって編成長30m以上の車輛でも市町村から特別認可をもらえば併用軌道を走行可能です。しかしながら、これは路上の停留所での客扱は原則的に認められないことになっているのです。京阪京津線は確かに一部区間で道路上を走りますが、道路上には電停がありません。しかしながら、鉄北線は準専用軌道化されているとはいえ道路上にいくつもの電停があります。軌道法の例外を認めるという特別認可を取るには一筋縄ではいきそうにありません。
 そこで考えました、併用軌道区間ラッシュ時輸送解決策。新琴似〜北24条間については列車種別を「急行」と「普通」の二種類設定します。そして急行の停車駅は新琴似→北33条→北24条→以降各駅停車とするのです。「新琴似」駅は専用軌道上。「北33条電停」は新道のアンダーパス専用軌道部分の地下駅。北24条はもちろん地下駅。この三駅については専用軌道上にあるため、軌道法の編成長30m以内のしばりを受けなくてすみます。と、すれば「急行」については京阪京津線級の全長60m程度(つまり三車体連接車2両連結)までは認められそうです。残る併用軌道上の電停の乗客は1両編成の「普通」が拾っていく形になります。1両ではラッシュ時の「北24条」以南の輸送には絶えられないと思いますので「普通」については「北24条」から「新琴似」・もしくは石狩開発の「花畔」までのシャトル運転とすればよいでしょう。運転頻度は「急行」2:「普通」1くらいでしょうか。

 と、いうことで併用軌道区間(北24条〜新琴似間)の運転設定が固まりました。
北24条〜新琴似間は「急行」と「普通」が存在。急行と普通の運行比率は2:1。「急行」は市中心部まで直通。編成長は三車体連接車×2両で60m。「普通」はラッシュ時は北24条〜新琴似間のシャトル運転。編成長は三車体連接車×1両で30m。


●2−4…市電西4丁目線の存続による南北線への影響


 現実世界の地下鉄南北線の最混雑区間は「さっぽろ」〜「中島公園」にかけての区間で間違いないでしょう(1区間だけでみると朝ラッシュ時の「中島公園→すすきの」だそうです。つまり南北線がラッシュ時3分30秒間隔で運転するのはこの区間があるためと言えるのです。「さっぽろから中島公園」にかけての区間が最混雑区間になる理由ははっきりしています。「さっぽろ〜中島公園」にかけてのエリアが札幌市の中心であることに加えて、「さっぽろ」でJR・東豊線と、「大通」で東西線・東豊線と接続する札幌の市内交通網の中心地になっているためです。
 しかし、架空世界では西4丁目駅前通り上に史実では地下鉄開通時に廃止されてしまった市電西4丁目線が走っており、この西4丁目線が南北線のバイパス的役割を果たすのではないかと考えます。市電西4丁目線が函館本線の高架化を期に駅前広場への延伸を果たし、また地下鉄東西線の代わりに市電東西線が大通公園上を走っているとすれば、札幌〜大通間の移動に限れば地上を走っていて、しかも乗り換えに便利な市電に大半の乗客が集中するはずです。
 もっとも現実世界でも南北線のバイパス路線として東豊線が「さっぽろ〜豊水すすき」の間を南北線と平行して走っているわけですが、この東豊線西2丁目通り直下を走っていて、南北線や東西線との乗り換えには2丁分歩かなければならないため、「さっぽろ〜大通」間の短距離移動にはほとんど利用されていないません。よって、架空世界に地下鉄東豊線がないことによる南北線への影響はほとんど考えなくてよいでしょう。
 
南北線の断面輸送量のデータがないため、はっきりと断定はできませんが(誰か教えて下さい)、この市電西4丁目線の存在により、この区間(さっぽろ〜中島公園)はラッシュ時1時間あたり5%程度は西4丁目線に流れるのではないかと思います。最混雑区間の混雑が緩和されることで、南北線全線で全線でのラッシュ1時間あたり列車総面積の値も5%程度の下方修正が可能だと思います。


●2−5…定山渓鉄道の存続による南北線への影響

 地下鉄南北線に線路敷地を譲る形で昭和44年に廃線となった定山渓鉄道。札幌市は「藤の沢」までの線路敷地を買い取ったようですが、実際に地下鉄が開通したのは真駒内まで。以来、石山地区への延伸要望が何度となく出されましたが結局実現することはありませんでした。旧定鉄線と平行するように走る国道230号線の渋滞、朝に何台も出る沿線の学校への通学専用バスを見て定鉄線の早すぎる廃止を悔やむ人は今でも多いのです。
 しかし、この架空世界では定山渓鉄道は、札幌と石山・藤野・簾舞地区を結ぶ重要な足として今でも生き残って、札幌市交通局南北線と相互乗り入れしているという設定です。定山渓鉄道が、もし現在でも存続していたら、いったいどの程度の運転間隔が適当なのか、以下ではこのテーマを検証してみたいと思います。

じょうてつバス 南北線真駒内行きバス本数
停留所名 石山2条4丁目 藤野3条2丁目 定山渓
朝ラッシュ時1時間あたり便数 22(3)+5? 17(3)+5? 2(3)
日中1時間あたり便数 7(2) 5(2) 1.5(2)
()内は定山渓発札幌行き直行便本数
+5は通学専用バス分(本数未確定)

 まずは、この表をご覧下さい。石狩地区の場合と同じように現行の路線バスの運行本数を3つの停留所をピックアップして比較してみたものです。定山渓→藤野3条2丁目→石山2条4丁目の順に真駒内に近づいていきます。多くの系統が重複する石山2条4丁目→真駒内間はラッシュ時に30本。平均2分に1本の割合でバスが走っていることが分かります。
 使用車輛はバスに替わって三車体連接のLRT車輛、しかも定山渓鉄道は石狩の場合と違って専用軌道のため2両連結も可能なため1列車でバス4〜6台分の輸送力を持たすことも可能です。このことから定山渓鉄道の場合、ラッシュ時には3両連結運転、日中は単行で運行間隔をシミュレートしてみると、定山渓→藤野地区は、ラッシュ時、日中共に1時間2本(30分間隔)、藤野地区→真駒内まではラッシュ時1時間6本(10分間隔)、日中1時間3〜4本(15〜20分間隔)あたりが適当でしょうか。
札幌市における鉄道沿線、沿線外の人口密度の経年変化  しかしながら、この運転間隔はあくまでも石山・藤野地区の人口が現在と同じということが前提です。もしも定鉄が存続し、石山・藤野両地区が札幌中心部と電車一本で結ばれたとすれば、その便利さによって沿線人口は今より断然多かったはずです。
 左の表は例によって運輸施設整備事業団のホームページから引用したもので、札幌市における鉄道沿線、沿線外の人口密度の経年変化を示したものです。
 現実世界の石山・藤野地区は非沿線地域にあたるため、人口密度は1ヘクタールあたり40人程度の水準のようです。
 しかし、仮に定鉄が存続したとしたらその人口密度は地下鉄沿線10kmの平均値1ヘクタールあたり70人に近い水準にまで達していたはずです。沿線人口が、現実世界の2倍程度と考えるのが自然なわけです。
 そう考えると定山渓→藤野地区は、ラッシュ時、日中共に1時間2本(30分間隔)で現状と変わらないものの、藤野地区→真駒内まではラッシュ時1時間12本(5分間隔)程度、日中1時間6〜8本(7.5〜10分間隔)程度と考える必要がありそうです。
 
この石山・藤野地区での沿線人口増加分がそのまま南北線の利用者増加分につながるならば、朝ラッシュ時の真駒内口は3車体連接車×2両×6本=1時間あたり列車総面積864u現状より需要が増加すると考えます。

その2へ続く