札幌市交通局 ミュンヘン形

  札幌市とミュンヘン市はビールが縁で結ばれた姉妹都市である。姉妹都市提携が行われたのは昭和47年(1972年)。
平成4年(1992年)、姉妹都市提携20周年を記念して、ノボシビリスクの時と同様ミュンヘンの電車を購入して札幌で走らせることになった。購入したのは、ミュンヘン市電にほぼ独占的に電車を納入していたラドゲバー社製のT3形。札幌市の電車とどことなく共通する丸っこい車体と大きな窓を持つ二車体連接車である。このタイプの電車はもともとはハンザ社が開発したもので、俗にハンザタイプと呼ばれているが、この電車の製造時にはハンザ社は倒産してラドゲバー社がパテントを買い取って製造し、ミュンヘンに納入したものだそうだ。

 改造内容はノボシビリスク市電の時とほぼ同じ。車体はミュンヘン時代は片運転台車だったため、札幌の運転条件に適合するよう運転台付きの車輛を二台購入して背中合わせに連結。両運転台式とした。またもともと車体片側にしかなかったドアを増設して車体両側に取り付けている。パンタグラフも札幌市電の標準品であるZパンタに、主制御器も間接非自動制御の余剰品に取り替えられている。
 改造に苦労したのは足周り。この電車は一見単車を2両つなげたように見えるが、台車は車体と固定されておらず、両ボギー台車はバーで固定されいて、単車特有の縦揺れ(ピッチング)を防ぐ仕組みになっている。もちろんミュンヘン市電と札幌市電では軌間が異なるため台車を改造しなければならないが、この特殊な機構のため台車の履き替えはできず、種車のものをそのまま改軌して使用している。カルダン駆動の電動機も種車のものをそのまま流用したが、台車を狭軌化したため電動機の取り付けスペースが狭くなり、電動機の外郭を削ったり、分解して幅を縮めたりといろいろ苦心の跡が見られる。

 約半年の改造期間を経て1992年8月にデビュー。ノボシビルスク形や現役最古の古典単車22号などと同様、観光客の利用が多い日中の「札幌駅前〜中島公園入口」間の運用に入ることが多く、札幌を訪れる観光客の目を楽しませてくれる。また、ビールの街ミュンヘンの電車ということで、夏場には貸し切りビール電車の運用に入ったりすることもあるようだ。