1990年代初頭から2000年代前半にかけての中国における高速旅客用ディーゼル機関車開発史は、二大ディーゼル機関車製造メーカー、大連機車と戚墅堰機車の争いとも言えるかもしれない。
高速ディーゼル機関車開発に対する両者の姿勢は対照的で、大連機車は既存の成功作、東風4型の信頼できる技術をベースに小改良を加えてスピードアップを目指したのに対して、戚墅堰機車は東風9型、東風11型と、積極的に新技術を取り入れてスピードアップを目指したことに大きな違いがあるといえる。
東風10F型は、1996年に登場した重連タイプ、最高速度160km/h対応の旅客形機関車である。大連機車製だけあって、その車体及び機器類には東風4シリーズと共通点が多く、車体形状こそ若干の違いがあるものの、性能的には同時期に製造された東風4D型をほぼそのまま重連タイプにしたものといっても差し支えないだろう。
高速旅客型として期待された東風10F型だが、常に重連で運用しなければならないため燃費がかかり、その割にはさほどの出力でもなく、最高速度160km/hとはいえ駆動方式は本来高速走行には適さない釣掛式のままと、かなり中途半端な車両になってしまい、結局1996年に2組4両、1998年に4組8両、計6組12両が製造されただけで製造中止になってしまった。
2007年現在、中国鉄道の花形であるZ列車を牽引して大活躍する東風11G型と、北京と太原を結ぶ京原線で、ローカル列車を牽引する地味な運用をこなす東風10F型、同じく高速、重連機関車として誕生した両者の明暗を分けたのは、偉大な成功作、東風4型の呪縛から最後まで逃れることができなかった大連機車と、従来の車両にとらわれず積極的に新機軸を採用した戚墅堰機車の差にあると言ったら言い過ぎであろうか。
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