札幌市交通局 ノボシビルスク形

  平成2年6月、札幌市はロシアのノボシビルスク市と姉妹都市提携を結んだが、その交流事業の目玉としてノボシビルスク市から電車を購入して札幌で走らせることになった。
 早速4両(2両は改造のための部品確保用)の電車がはるばる海を渡ってやって来て、電車事業所で札幌市向けの改造が施されることとなった。車体に関しては極力原型を損ねないよう留意されたが、それでも方運転台式(ノボシビルスクでは終端部ループ線のため折り返しの必要性がなく片運転台式だった)を両運転台式にしたり、出入り口が片側にしかついていなかったもの両側に取り付けたり、車内の気密性を増すために窓をアルミサッシ化したり、暖房機能を強化したりとかなり大がかりな改造になった。
 足周り、電装品関係に至っては総取り替えに近い状態となっている。ノボシビルスク市電はアメリカのPCCカーの流れを組むカルダン駆動の高性能車だったが、ノボシビルスク市電の軌間は1524mmの広軌で、狭軌の札幌市電では台車がそのままでは使えないため、札幌市電の廃車発生品を流用して思い切って交換、釣掛駆動の旧性能車となってしまった。主制御器、コンプレッサー・パンタグラフ・モーターなどの電装品も信頼性や他車との互換性の観点から、手持ち品に全て取り替えられため、外見こそロシア時代の面影を残すものの性能的には全く別の車になってしまったと言ってよい。
 当初2両が竣工する予定だったが、改造に予想以上の費用がかかってしまったことから、竣工したのは1台のみで、改造されなかった車は電車事業所に放置され、倉庫として使われていたようだが最近姿を消してしまった。

 結果的に1形式1両しか登場しなかったノボシビリスク形だが、札幌・ノボシビルスクの両市の友好関係の象徴として大切に使われている。出入り口の配置が車体の両端にある異端車のためラッシュ時の運用には入らず、最近は日中の札幌駅前〜中島公園入口間の小運転に利用されることが多いようだ。