1.新札幌駅前〜大谷地
新札幌駅前↓厚別区役所前
 新札幌駅前電停は、JR新札幌駅駅ビルの一階にあり、駅前というよりはむしろ駅中といったほうがいい立地条件である。東西線の他の主要駅と同様、新札幌駅前も駅員配置駅であり、出札業務は自動改札機によって行われており駅員も配置されている。
 ホームは二面三線を有し、有効長の長い1番線を「直行」用に使用。2番線は円山公園まで走る各停、3番線はさっぽろ行きの系統に使用されている。他に留置線が一線あり、ラッシュ時増結使用するための電車が一編成常時留置してある。
 
 市電東西線の東の起点駅「新札幌」はJR駅・市電・バスターミナルが一同に会する札幌市の東部の交通の一大拠点であり、朝夕のラッシュ時には多くの通勤通学客で賑わうところだ。JR駅から駅に入っている複合商業施設「新札幌DUO」のショッピングモールを通り抜け、エスカレーターで一階に降りると、そこはもう市電乗り場である。

 自動券売機で切符を買い改札口を抜けると櫛形高床ホームが並び、鮮やかなグリーンに塗られた三車体連接車が停車中。発着番線は1番線がさっぽろ行き「直行」、2番線がさっぽろ行き[普通]、そして3番線が円山公園行 き「普通」と、系統毎に分かれて色分けされていて、初めての乗客にも分かり易くなっている親切設計である。と、そこへ折り返し「直行」大通り行きとなる回送電車が1番線に到着。三車体連接車を二本つなげた堂々たる列車が到着するやいなや、ドアが開くのももどかしく大勢の通勤・通学客が電車の中に吸い込まれていく。高架上から出るJRを利用すれば、札幌までは所要時間わずか7分でつくにもかかわらず、新札幌から札幌方面に向かうのに市電を選ぶ利用者は多い。運賃の安さと朝ラッシュ時に1分30秒間隔という待たずに乗れる利便性、そして何より都心部の大通まで乗り換えなしで行けることが大きいのだという。

 市電の「新札幌駅前」電停から感じる雰囲気は路面電車のそれというより、多少の狭さは感じるものの郊外私鉄のターミナルのほうに近い。時代遅れののろまなチンチン電車というイメージはそこにはなく、今もてはやされている時代の先端を行くLRT(中量輸送機関)そのものと言える。日本で、いや世界に先駆けて路面電車をLRTに進化させ、その後の路面電車復権の先鞭を付けたとして世界中の注目を集めた「札幌市交通局」東西線、朝ラッシュ時の一コマである。

 早速、私も「さっぽろ」行きの「直行」電車に乗り込む。高床式のホームだから、プラットホームの高さと電車の床面は一致していて、路面電車特有の乗降用ステップを一段一段どっこらしょと登らなくても済むようになっている。昨今バリアフリーがもてはやされており、日本各地でステップをなくした超低床車が登場して久しいが、札幌では超低床車が出現するはるか以前から、プラットホームの嵩上げによってバリアフリーを実現していたというから恐れ入る。

 ブォォォンと、札幌市電特有の警笛を響かせて、三車体連接車を二本つなげ全長60mになろうかという電車は大通に向けて出発。厚別青葉通り上の併用軌道区間に出る。ここから次の厚別区役所前までの450mは東西線では数少ない道路併用軌道区間で、車と併走するものの、道路幅員に余裕があることから電車は車に邪魔されることなく進む。ゆるやかに左に曲がりながら車とともに坂を駆け下り南郷通りに出たところで右折。すぐに最初の電停、厚別区役所前である。

青葉町←厚別区役所前↑新札幌駅前
 新札幌駅を出た電車が最初に泊まるのがここ「厚別区役所前」電停。南郷通り上にある簡素な電停で、もちろん駅員無配置のため「直行」電車は停車しない。
 目の前には札幌っ子なら一度は言ったことがある青少年科学館が建っている。厚別区役所への最寄電停もココ。
 
 厚別区役所前は名前の通り厚別区役所の最寄り電停、また目の前に立つ青少年科学館の最寄り電停でもあるが、簡素な屋根があるだけで新札幌駅前とは随分違う、ホームこそ嵩上げされているものの路面電車の電停らしい電停で、私の乗車した直行電車はスピードをゆるめず通過した。そう、「直行」とは朝のラッシュ時に限って運行されるいわゆる急行のこと。さっぽろまでは合計で19電停があるが、「直行」はそのうちの7電停を通過するのである。通過する電停は全て厚別区役所前のような駅員無配置駅。全長60mと通常の電車並の輸送力を持つ直行電車では各停電車で行われているような下車時に車内で運賃収受をすることが困難であり、降車用ドアも限られるため、乗降に時間もかかる。そこで、「直行」は通常の路面電車で行われている改札業務は電停に委ね、駅員無配置電停を全て通過することによって電車並の輸送力とスピードを手に入れたのである。

 厚別区役所前から先、大谷地までの2.0kmは南郷通りの中央を走るが、線路は緑地帯で道路とは完全に分離されている、いわゆるセンターリザベーション方式が採られており、また、電車営業時間内での車右折行為は禁止されているため、右折車に線路を遮られることもない。時折交差点での信号待ちがあるものの、実質的には専用軌道に近い走行環境である。道路の幅員をはじめ様々な問題があろうが、どこの路面電車も目指して欲しい姿だ。
ひばりヶ丘青葉町厚別区役所前 大谷地ひばりヶ丘青葉町
 ひばりヶ丘団地の東端に位置する電停である。この図で上下に南郷通りと交差しているのは厚別中央通り。  ひばりヶ丘団地の中心に位置する電停で、駅員無配置の簡素な電停ながら朝夕を中心に乗降客は多い。そのためか、他の電停よりもホームの幅は広く、電停は厚別西通りを挟んで点対称に配置されている。

 とはいえ札幌市交通局にも問題がないわけではない。南郷通り上には「厚別区役所前」「青葉町」「ひばりヶ丘」の三電停があるのだが、いずれも直行電車の通過駅となっている。しかし市電東西線開通と前後して沿線にはひばりヶ丘団地などの団地郡が造成されたため朝夕を中心に乗降客は結構多い。現に車上からは多くの人が電停で電車待ちをしている姿を見かけた。これらの乗客がラッシュ時に市の中心部を目指すには、大谷地で「直行」への乗り換えを強いられるか、何本も追い抜かれつつノロノロ大通りへ向かう他ない。素人目には「直行」「各停」の併存する複雑なダイヤを廃止して全車「各停」にして直行列車の通過待ちなどの無駄な時間をなくし、トータルでの所要時間短縮を目指せばよいかとも思うのだが、実際にはそう簡単にはいかない事情があるらしい。

 それが、軌道法という法律の厚い壁である。日本においては路面電車を敷設する歳には全てこの明治時代に施工された時代錯誤とも思われる法律に雁字搦めにされてしまう。それは日本の最先端を行く高速路面電車こと札幌市営東西線とても例外ではない。その最たる例が全長30m制限であろう。軌道法においては全長30mを越える電車は運行してはならないのである。札幌市電の三車体連接車の全長が30mとなっているのもこの法律があるがゆえ。直行は、三車体連接車を2本繋げて全長60mとなっているが、これは併用軌道上で乗客を取り扱わないことを条件に特例として認められたにすぎない。つまり現行の法律下では、南郷通の併用軌道上の電停で直行電車が客扱いをするのは不可能ということなのである。「直行」列車が東西線の西の終点円山公園まで行かず大通電車センターで折り返しになるのも、東西線西端区間が併用軌道となっているためである。

 この一事をもってして、東西線は路面電車ではなく、地下鉄として建設すべきであったという失敗論もよく論議される。実際、東西線は本来地下鉄として開業するはずだった路線なのだが、札幌市が冬季オリンピックの誘致に失敗。建設予算を大幅に削減されたため、地下鉄計画を中止し、既存の路面電車を高規格化さざるを得なかったという負の歴史があるため、余計に東西線路面電車失敗論が力を持ってしまうのはいたしかたないところ。しかし私はあえて異を唱えたいと思う。今、全国の地下鉄で黒字になっている路線はいったい何路線あるのだろうか?果たして東西線が地下鉄として建設されたとして、今のような市営交通のドル箱路線として存在しえただろうか?莫大な建設費のかかる地下鉄を持ってしまったことで財政難にあえぐ自治体が多い中で、都市の見栄でなく実をとった札幌市の英断に(特に路面電車の廃止が各都市で相継いでいただけに余計に)拍手を送りたい。問題は余りにも時代に逆行した軌道法なのである。法さえ整備されれば、東西線は今よりもよくなるはずだし、札幌の吹かせた路面電車復権の風は全国に広がるはずだ。そんな事を考えているうちに電車は南郷通りを左折して、大谷地駅のホームに滑り込んだ。

2.大谷地〜ビール工場前へ
写真@

 JR駅新札幌駅ビルの一階にある現実世界における新札幌バスターミナルの写真です。架空札幌市電の新札幌駅前はここのスペースを利用させていただきました。イメージを湧かせるために線路を引いてみましたが歪んでいるのはご愛敬。
写真A

 厚別青葉通りです。三車線の通りなので幅は充分あります。一車線分電車によこしてもらいましょう。
写真B

厚別青葉通りから南郷通りに入った所です。軌道敷を確保するため写真を加工して南郷通の幅を広げてしまいました。調子に乗って区役所前の電停も描いてみたのですが、これが激ヘタ。
写真C

ひばりヶ丘団地です。電車の軌道敷は赤い矢印のように通っているという設定。
写真D

ひばりヶ丘団地のはずれにある馬場公園。
写真E

馬場公園を過ぎると三里川という小さな川をまたぐ橋に出ます。ちなみにこの写真には写っていませんが、この橋から、地下鉄東西線唯一の地上区間?大谷地車庫への出入庫線のシェルターを見ることができます。
写真F

新札幌から走ってきた電車はこの矢印の先の交差点で左折して専用軌道の大谷地駅に入るという設定です。この写真の右端に地下鉄大谷地駅の出口が映っていますね。